1990年代半ば、東京の繁華街にはアメリカの二大ストリートギャング「クリップス(青)」と「ブラッズ(赤)」の抗争構図が急速に輸入された。ヒップホップやスケートボードといった純粋なストリートカルチャーの流行と軌を一にしながらも、輸入されたのはファッションの表層だけではなかった。彼らはチームカラーを身にまとい、縄張り(テリトリー)を主張し始めたのだ。
「相手の色の服を着ているだけで標的にされた」。当時の渋谷や池袋を知る元メンバーはそう振り返る。集団心理は急速にエスカレートし、駅前広場や薄暗い雑居ビル街では、些細な視線の交差から数十人規模の乱闘が日常茶飯事となった。単なる威嚇にとどまらず、刃物やスタンガンが持ち出される凶暴化のプロセスは、従来の暴走族文化とは異質のスピード感と匿名性を帯びていた。都市の片隅で起きていたのは、居場所を見失った若者たちによる、刹那的で残酷な陣取り合戦だった。