物語の冒頭、大島凪(28歳)は都内の家電メーカーで働く極めて「真面目な」OLだった。だがその真面目さは、他人の顔色を窺い、場の雰囲気を壊さないために自分を極限まで押し殺す受動的なものに過ぎない。同僚からの雑用を押し付けられても愛想笑いを浮かべ、天パの髪を毎朝1時間かけてストレートアイロンで伸ばす日々。
そんな彼女の平穏を根底から覆したのが、陰で自分を否定していた同棲中の彼氏・我聞慎二の発言だった。「あいつはメシと体が都合いいから一緒にいるだけ」。決定的な一言を聞いて倒れた凪は、辞職届を出し、LINEを消去し、自転車一台で郊外の古いアパートへと引っ越す。これがすべての始まりだった。