『火花』という作品が持っていた圧倒的な破壊力は、価格以上の文化的価値を市場にもたらした。現役のお笑い芸人が本格的な純文学に挑み、売れない芸人たちの葛藤と友情、そして漫才に対する情熱を静謐な文体で描き出したニュースは、当時の出版業界を大きく揺さぶった。
売れない若手芸人・徳永と、強い美学を持つ先輩芸人・神谷。二人が夜の街を歩き、お笑いとは何か、生きるとは何かを模索する姿は、単なる芸人小説の枠を超え、働くすべての人々の心を穿つ青春文学としての評価を確立した。
雑誌『文藝春秋』に掲載された際の完売騒動から始まり、単行本の累計発行部数は300万部を突破。出版不況と言われて久しい時代にあって、本を普段読まない層まで書店へ足を運ばせた功績は大きく、文庫化後も長期間にわたってロングセラーを記録している。