伝統的な国語辞典を開くと、「嫁」の第一義は明確に記されている。「息子の配偶者」、すなわち親の視点からみた男性の結婚相手だ。「息子の嫁」という使い方が正統であり、男性が自分の妻を他人に紹介する際に「うちの嫁が……」と言うのは、厳密には本来の誤用にあたる。しかし、言葉は固定された化石ではない。時代が下るにつれて使い手たちの意識は柔軟に変容してきた。
日本語学の専門的な分析によれば、「嫁」の語源は「家に招く女」、あるいは「家を継ぐ者の妻」という家制度(家父長制)を基盤とした文化から派生したとされる。古くは家同士の結びつきが重視され、個人の感情よりも家門の存続が最優先された。そのため、親の視点から家族に加わった女性を呼ぶ言葉として「嫁」が定着した歴史がある。現代において「息子の妻」という本来の意味を超えて使われる背景には、家族観そのものの変化が強く影を落としている。