日本放送協会(NHK)の連続テレビ小説として1983年に放送された『おしん』は、日本のテレビ史における金字塔である。最高視聴率62.9%という前代未聞の数字を叩き出し、その熱狂は海を越えて世界数十カ国へと広がっていった。しかし、この怪物的なヒット作の誕生背景には、知られざる激しい葛藤が存在していた。
当時のテレビ界において、明治から戦中・戦後を泥まみれで生き抜いた女性の極貧の半生を描く企画は、あまりに重く地味だと難色を示されていた。だが、彼女は「逆境に負けず逞しく生きる女性の姿こそ、飽食の現代人が失った生きる力を呼び覚ます」と確信し、一切の妥協を排して原稿に向き合った。極寒の山形ロケの裏で紡がれた原稿には、厳しい現実を見つめながらも人間への温かな愛が込められていたのだ。