若くして将棋界の頂点に君臨した中原だが、十六世名人の称号を手にするまでの道程は決して平坦な消化試合ではなかった。28歳の若さで名人通算5期を達成し、永世名人の資格を得た陰には、言葉に尽くせぬ重圧と孤独な闘いがあった。
防衛戦が続く過密なスケジュールの中、いかにして平常心を保ち続けるか。関係者の証言によると、中原は対局前夜であっても決して力まず、自らの「自然体」を崩さない工夫を徹底していたという。土壇場の逆境から一瞬の隙を突いて逆転を呼び込む勝負強さは、盤外での徹底した自己コントロールと、将棋というゲームに対する純粋な探求心から生み出されたものだった。