隣家への延焼を防ぐ防火壁として考案された「卯建」。瓦屋根の端に設けた小壁に屋根を葺いたこの独自の造形は、施工にあたって莫大な費用と高度な職人技を要した。ゆえに、これを築くことができるのは町内でも限られた一握りの富裕層のみ。競い合うように豪華な装飾や家紋を刻み込み、自らの威光を示したことが「うだつを上げる」という言葉を生み出す契機となった。
建造物群を観察すると、細部に宿る細工の差に驚かされる。鬼瓦の形状、破風の曲線美、壁面に施された漆喰のなめらかさ。単なる建築上の補強材ではなく、当時の商人たちの意地とセンス、そして美意識の戦いそのものが屋根の上に繰り広げられていたのだ。