昭和カルチャーの金字塔として語り継がれる写真集『私生活』。1971年に世に出たこの一冊は、写真家・立木義浩と加賀まりこという、二つの強烈な才能が火花を散らして誕生した。パリと東京を舞台に撮影されたカットの数々は、あらかじめ決められたポーズをなぞる商業グラビアとは一線を画す。そこにあったのは、演出を極限まで削ぎ落とした先にある、生々しくも気品に満ちた生身の女性の姿だった。
立木義浩のカメラは、ベッドに身を投げる奔放な瞬間や、街角でふと見せる孤独な横顔を容赦なくフィルムに焼き付けた。光と影が交錯するモノクロームの画面の中で、加賀まりこは自らの身体を惜しげもなく晒しながら、観る者を射すくめるような視線を投げかける。男性目線の欲望に応えるための客体ではなく、自らの意志でそこに立つ主体としてのヌード。これこそが『私生活』が時代を超えてアートピースとして称賛される最大の真相である。