2026年代以降、吉野家が断続的な値上げを余儀なくされた背景には、企業努力の限界を超えた世界規模のコスト構造激変が存在します。値上げを決定づけた要因は単一ではなく、以下の3つの強烈な逆風が同時に直撃した結果です。
第1の要因は、米国産牛肉(ショートプレート)の国際的な調達価格の高騰です。吉野家の牛丼の味を決定づける穀物肥育のショートプレート(牛バラ肉)は、中国をはじめとする新興国の旺盛な牛肉消費や、現地米国の干ばつによる飼料代高騰・牛の飼育頭数減少によって争奪戦が発生。調達コストそのものが歴史的高値圏で推移し続けています。
第2の要因は、外国為替市場における記録的な円安水準です。吉野家は牛肉だけでなくタマネギやタレの原料に至るまで多くを輸入に頼っています。2010年代半ばには1ドル=100円〜110円前後で推移していた為替レートが、150円前後の歴史的円安水準へシフトしたことで、輸入仕入れコストは単純計算で4〜5割近く跳ね上がりました。
第3の要因は、国内における人件費の上昇とエネルギーコストの高騰です。外食業界全体が直面する深刻な人手不足に伴い、アルバイト・パートの募集時給は全国的に急騰。さらに電気・都市ガス代や物流輸送費の上昇が、24時間営業を基本とする店舗網の収益を直撃しました。これらを総合すると、牛丼1杯の原価率は危険水準まで高まっており、500円台への改定はブランドの存続と品質維持のための「不可避な防衛策」だったといえます。