京都府京都市左京区吉田。大学や神社仏閣が点在する落ち着いた街並みの一角に、本店の暖簾が揺れている。店内へ足を踏み入れると、色とりどりの小袋や上品な陶器が並び、穏やかな甘い香りが漂う。
金平糖作りには設計図も温度計もない。気温、湿度、釜の熱さ、そして砂糖の結晶が擦れ合う微細な音の変化。すべてを職人の皮膚感覚と聴覚で見極める。和菓子製造業の中でも群を抜いて繊細とされるこの技法は、国の無形文化を支える伝統工芸品そのものだ。京菓子の長い歴史の中でも、金平糖を専門として看板を守り抜いた店は他にない。一粒の角(ツノ)が均等に立つまで、ただひたすらに釜と向き合う膨大な時間が流れている。