網走監獄を語るうえで外せない人物がいる。「昭和の脱獄王」と評された白鳥由栄(しらとり よしえ)だ。どんなに強固な鍵も針金一本で解除し、身体関節を柔軟に外す異能の持ち主だった彼は、この難攻不落とされた網走監獄からも脱獄を果たしている。
味噌汁の塩分で鉄枠と視察孔のボルトを腐食させ、極寒の冬夜に脱出したというエピソードは、もはや伝説の域に達している。展示されている彼の脱獄シーンを再現したジオラマは、一見の価値がある。厳重を極めた監獄構造と、それを裏かいた人間の執念。二つの緊張感が交錯する空間が、どこか恐ろしくも不思議な緊張感を醸し出している。