吉本ばなな・ハルノ宵子姉妹のバックボーンを語る上で欠かせないのが、特異ともいえる吉本家の家族構成です。
父は「知の巨人」と称された思想家・詩人の吉本隆明、母は俳人として句作に励んだ吉本和子。この両親のもとに生まれた二人の娘は、幼少期から言葉と思想、そして無数の本と猫に囲まれた極めて自由で濃密な空間で育ちました。
家庭内での吉本隆明は、世間が抱く気難しい思想家のイメージとは異なり、娘たちに対して深い愛情を注ぐ父親でした。しかし同時に、母・和子の病弱さや、後に両親が揃って直面する高齢化と健康悪化は、長女であるハルノ宵子の肩に重くのしかかることになります。谷中の実家を拠点に、両親の生活全般と愛猫たちの世話を一手に引き受けたのがハルノ宵子でした。