日本最大規模の収容力を誇る府中刑務所や、過酷な極寒の歴史を持つ網走刑務所など、全国の施設において「食事」は施設の治安を左右する死活問題である。元刑務官で矯正行政の現場を長年見つめてきた作家の坂本敏夫氏は、獄中における食の重要性について度々警鐘を鳴らしてきた。
刑務所内では、自由も娯楽も人間関係も極限まで剥奪される。その中で唯一、受刑者が動物的本能として執着するのが「毎日の食事」だ。配膳の量が隣の受刑者よりわずか数グラム少ないだけで激しい喧嘩が勃発し、味付けの急変が処遇への不満に直結して暴動の引き金になりかねない。
そのため、現場の刑務官たちは配食の公平性と計量に神経を尖らせている。豪華だからではなく、不満を爆発させないためのギリギリの防衛ラインとして、一定水準の質と量が維持されているのだ。