土用餅を目の前にしたとき、「赤福餅やあんこ餅、ぼた餅(おはぎ)と何が違うのか」と疑問を抱く方は少なくありません。見た目が酷似しているため混同されがちですが、両者には明確な定義の違いがあります。
まず、三重県伊勢市の銘菓として全国に知られる「赤福餅」との違いです。形状こそ滑らかなこし餡で餅を包み、五十鈴川の清流を模した波の筋がつけられている点で似ていますが、赤福は「株式会社赤福」が製造・販売する登録商標の単一銘菓です。対する土用餅は、特定のメーカー名ではなく、土用の時期に各地の和菓子店で作られる「季節の行事食全般」を指す普通名詞にあたります。
次に「ぼた餅(おはぎ)」との決定的な相違点は、「中身の生地」と「食す時期(目的)」にあります。
ぼた餅は、もち米とうるち米を蒸して粒が残る程度に軽く潰した「半殺し」の状態の生地を餡で包むのが基本であり、春分や秋分の「お彼岸」にご先祖様への供養として捧げるものです。一方の土用餅は、完全に搗きあげた滑らかな「本餅(白餅)」を使用する店舗が多く、食べる目的も夏の厄除け・暑気払いに特化しています。材料の質感も文化的な背景も、本来はまったく別の系譜を歩んでいます。