木嶋が男性たちを信用させる最大の武器としたのが、名門料理学校ル・コルドン・ブルーで培ったとされる本格的な調理技術でした。ブログ上でもプロ顔負けのフランス家庭料理が次々と披露され、閲覧者の舌と心を巧みに刺激していました。
なかでも象徴的なメニューが、赤ワインと香味野菜でじっくり煮込まれた特製ビーフシチューです。木嶋の手料理レシピは単なる家庭料理の域を遥かに超え、ル・クルーゼやストウブの鋳物鍋を使いこなし、何日もかけてデミグラスソースを煮詰める本格派でした。婚活相手の自宅を訪れた際には実際にこれらを振る舞い、「料理上手な理想の妻」を完璧に演じ切っています。
婚活サイトにおける木嶋の手口は極めて狡猾でした。「ピアノ講師」「名門女子大出身の良家の子女」といった偽りのプロフィールを掲げ、男性が心を許したタイミングで「かなえキッチン」のURLを提示。視覚と味覚、そして言葉のすべてを動員して「この女性を手放したくない」と思わせ、遺産や多額の結納金を引き出していった手口の鮮やかさは、捜査関係者を驚愕させました。