なぜフロントガラスの「外側」ばかりが白く濁ってしまうのか。その物理的背景にあるのは、冷えた缶ジュースの表面にびっしりと水滴がつく現象と完全に同一の「露点温度(ろてんおんど)」の関係です。
空気は温度が高いほど多くの水蒸気を含むことができ、温度が下がるほど抱え込める水分の限界量(飽和水蒸気量)が減少します。夏場や降雨時の外気は、気温28〜32℃、湿度80%〜90%を超えるような極めて湿潤な状態にあります。この湿った大気に対し、車内から吹き出された18〜22℃の冷風によってフロントガラスが局所的に冷却されると、ガラスに接触した外気の温度が「露点」を下回り、気体でいられなくなった水分が無数の微細な水滴となってガラス外面に凝結します。これが外側結露の正体です。
一方で、冬場に発生する曇りは「車内側」に起きます。外気は乾燥して冷たく、車内の乗員の呼吸や汗によって車内の湿度が高まり、冷たいガラスの内側に水分が付着する現象です。したがって、「冬の内側の曇りは、ガラスを温めるか除湿冷風を当てて乾かす」のが正解であるのに対し、「夏のフロントガラス結露対策は、ガラスを冷やしすぎないように送風を逃がす」ことが正解となります。正反対の現象であるにもかかわらず、同じ感覚でデフロスターを作動させてしまうことが、夏の視界不良事故を誘発する隠れた罠となっています。