ジャンヌ・ダルクの劇的な栄光と悲惨な最期は、歴史社会学や組織論の観点からも極めて重い教訓を現代に投げかけています。
組織が存亡の危機にあるとき、既存のルールを打破する「異端のカリスマ」が救世主としてもてはやされます。しかし、危機が去って組織が安定を取り戻すと、その突出したカリスマ性や妥協のない純粋さは、既存の権力構造にとって「もっとも厄介で制御不能なリスク要因」へと反転します。シャルル7世をはじめとする宮廷政治家たちにとって、オルレアンを救ったあとのジャンヌは、敵国との和平交渉を進める上で邪魔な障害物となってしまったのです。
私たちが歴史から学ぶべきは、「利用価値があるときだけ絶賛し、目的を達成した瞬間に梯子を外す組織の冷酷な力学」です。どれほど卓越した成果を上げようとも、自己を客観視し、組織内のパワーバランスや自身の安全保障を怠れば、いとも容易く切り捨てられてしまうという現実を、彼女の生涯は残酷なまでに証明しています。