なぜイーストフードは「危険」「体に悪い」と恐れられるようになったのでしょうか。発端は、1990年代から2000年代にかけて大ヒットした添加物批判本や一部の健康系ジャーナリズムです。「塩化アンモニウムは毒劇物指定されている」「イーストフードを食べると発がんリスクが高まる」といった扇情的な見出しが世間を賑わせました。
しかし、食品安全委員会および厚生労働省による安全性評価に基づけば、これらの主張は科学的事実から大きく乖離しています。
まず、毒劇物に指定されている高濃度の工業用化合物と、厳格な公定規格をクリアした食品添加物グレードの成分は純度・用途ともに全く別物です。さらに、イーストフードとして生地に添加される量は、小麦粉に対してわずか0.1%〜0.3%程度に過ぎません。その大半は発酵の過程で酵母自身によって消費・分解され、最終的に焼き上がったパンの中に残存する量はごく微量です。
食品安全委員会が実施するリスク評価では、動物実験によって無毒性量(NOAEL)を測定し、その100分の1を一生涯毎日摂取し続けても健康影響が出ない「一日摂取許容量(ADI)」として設定しています。仮に人間がイーストフードの毒性を発現するレベルまでパンを食べようとすれば、その前に塩分や炭水化物の過剰摂取で命を落とすほどの天文学的な量を消費しなければなりません。したがって、「日常的に市販パンを食べることで発がん性や健康被害が生じる」という噂は、明確な科学的根拠のないデマであると結論付けられています。