この場所を語る上で、1990年代初頭から中盤にかけて巻き起こったストリートカルチャーの爆発を避けて通ることはできない。当時、日本の音楽シーンの地殻変動を起こしたパンクロックの爆炎は、まさにこの地下空間から全国へと広がっていった。
その筆頭がHi-STANDARDだ。彼らが放つハイスピードなビートとメロディックなサウンドは、この狭小なステージで磨かれ、やがて巨大なフェスを動かすムーブメントへと昇華した。ギタリストの横山健が掻き鳴らしたギターの爆音は、当時の若者たちのバイブルとなり、今なおこの地下空間の壁の奥深くに残響として刻み込まれている。
当時の熱気を知るベテランスタッフは振り返る。「あの頃のフロアは、汗と熱気で天井から水滴が滴り落ちていた。ダイバーが次々と頭上を舞い、バンドと客の境目なんてどこにもなかった」。そうした伝説的な夜の積み重ねが、この場所を単なるライブハウスから伝説の聖地へと押し上げたのだ。