髪切りマッチの真の面白さは、戦いが終わった「その後」のストーリーにあります。髪を奪われて全てを失ったはずの敗者が、そこからどのように立ち上がるのかがレスラーとしての真価を問う試金石となるからです。
前述の長与千種は、丸坊主にされたことでファンとの連帯感をさらに強め、女子プロレス界の絶対的カリスマとして不動の地位を築きました。また、スターダムのジュリアも、丸坊主から伸びていく過程のショートヘアスタイルを自らのトレードマークに変え、より洗練された強烈な個性を確立して海外トップ団体へ羽ばたく足がかりとしました。
男子プロレスにおいても、新日本プロレスで髪切りマッチを経験した棚橋弘至や内藤哲也、鈴木みのるなど、トップレスラーたちは屈辱的な敗北をステップにして新たなキャラクターや圧倒的な説得力を手に入れてきました。髪切りマッチは、敗者を葬り去る儀式であると同時に、新たなスターを生み出すための残酷で神聖な通過儀礼でもあるのです。