1作目で観客の涙を誘った最大のキーパーソンが、ライリーの幼少期の空想上の友だち(イマジナリーフレンド)であるビンボンです。ピンクの綿菓子でできた体、ゾウの鼻、ネコのしっぽ、イルカの鳴き声を併せ持つこの愛すべき存在は、物語のクライマックスで自らを犠牲にして記憶のゴミ捨て場(Memory Dump)へと消滅していきました。
ピート・ドクター監督が当時の制作秘話で明かした通り、ビンボンの消滅は「人が大人になる過程で、避けられない純粋な幼少期の喪失」を具現化したものです。子どもが成長してより複雑な社会的現実に適応するためには、かつて心の支えだった空想の世界を手放さなければならない瞬間が訪れます。
「僕の代わりに、彼女を月へ連れて行ってあげて」という最後の言葉を残して粒子となって消えたビンボンの姿は、ライリーの精神が一段階成熟した決定的な証であり、ピクサー映画史に残る最も切なく美しいメタファーとして語り継がれています。