インフルエンザに感染した際、「病院に行かないと治らないのではないか」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、日本感染症学会や厚生労働省の公式資料が示す通り、インフルエンザウイルスに対する免疫反応が正常に機能する健康な成人の場合、自然治癒までにかかる日数は通常7日から10日程度です。多くの場合、発熱のピークは2〜3日目であり、その後徐々に解熱へと向かいます。
そもそも医療機関で処方されるタミフル(オセルタミビル)やゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)といった抗ウイルス薬の効果は、体内のウイルス増殖を抑えることで「熱が出ている期間をおおむね1日程度短縮し、ウイルスの体内排出量を速やかに減らすこと」にあります。抗ウイルス薬自体が熱を直接下げるわけでも、ウイルスを一瞬で死滅させる特効薬というわけでもありません。そのため、体力を温存し水分を確保できる健康な大人であれば、医療機関にかからず自宅で安静に過ごす選択肢そのものは医学的に否定されていません。
ただし、これは「誰にとっても安全」という意味ではありません。体力が著しく低下している高齢者、呼吸器系や心血管系に持病を抱える慢性疾患患者、免疫抑制状態にある方、そして神経系が未発達な乳幼児にとっては話が完全に異なります。後述するような急激な重症化を防ぐためにも、「病院に行かない」という選択が許容されるのは極めて限定的なケースであることを認識しておく必要があります。