アニメ『いなかっぺ大将』の主題歌クレジットに記された「吉田よしみ」という名前。リアルタイム世代であっても「当時は普通の少年少女合唱団かアニソン専門の新人歌手だと思っていた」と振り返る人は少なくありません。しかし、その正体はまぎれもなく、後に『珍島物語』や『道頓堀人情』で日本レコード大賞をはじめ数々の栄冠を手にする天童よしみの若き日の姿です。
大阪府八尾市で育った彼女は、幼少期から類まれな歌唱力を発揮し、関西地方のあらゆる「のど自慢大会」で優勝を総なめにしていました。地元では「天才少女」として知られた存在でしたが、プロへの道は決して平坦ではありませんでした。彼女の実力を決定的に世に知らしめたのが、当時最高峰のオーディション番組として恐れられていた読売テレビの『全日本歌謡選手権』です。
1970年、当時中学生だった彼女は同番組に出場。並み居るプロ・アマの大人たちを相手に圧倒的な歌唱力で勝ち進み、なんと10週連続勝ち抜きを達成して史上最年少チャンピオンに輝きました。この驚異的なパフォーマンスをテレビの前で目撃し、雷に打たれたように惚れ込んだのが、アニメ制作会社タツノコプロの創業者である吉田竜夫氏でした。
関係者の証言や当時の制作秘話によると、タツノコプロ側は「新番組『いなかっぺ大将』の主人公・風大左衛門の泥臭くも愛嬌のあるエネルギーを表現できるのは、この少女の規格外の声しかない」と確信し、即座に主題歌のオファーを出したとされています。こうして1970年、本名である「吉田よしみ」名義で吹き込まれた楽曲こそが、昭和アニソン史に刻まれる「大ちゃん数え唄」でした。