「鼻をかんだ瞬間に耳がツーンと痛くなった」「耳の中でバリッと鈍い音がした」という経験を持つ人は少なくありません。人間の頭部構造において、鼻の奥(上咽頭)と鼓膜の奥にある中耳腔は、「耳管(じかん)」と呼ばれる細い管で直結しています。通常、この耳管は閉じており、物を飲み込んだときなどに一瞬だけ開いて耳の中の気圧を調整しています。
ところが、両方の鼻の穴を開けたまま、あるいは両鼻を中途半端に押さえて「フンッ」と強烈に息を吹き出すと、鼻腔内の圧力が逃げ場を失います。その結果、本来は外へ排出されるべきウイルスや細菌を含んだ鼻水が、高圧のジェット噴射のように耳管を逆流し、無菌状態であるべき中耳へダイレクトに侵入してしまうのです。これこそが、片方ずつかむ理由であり、誤った鼻のかみ方によって引き起こされる「急性中耳炎」の典型的な発症ルートです。
耳鼻咽喉科の専門医も「強く鼻をかみすぎた結果、鼓膜に微小な損傷が生じたり、耳管狭窄症を起こして耳閉感に悩まされる患者が後を絶たない」と警鐘を鳴らしています。耳を守るためには、強い圧力で吹き飛ばすのではなく、「低圧で気道を作って送り出す」という意識への転換が欠かせません。