行政や流通の都合を一旦脇に置き、純粋なサイエンスの目で見ると風景は一変する。植物分類学の世界には、そもそも「野菜」や「果物」という概念そのものが存在しない。
近代植物分類学の父とされるカール・フォン・リンネが確立した分類体系は、花や雄しべ、雌しべといった繁殖器官の構造に依拠している。植物を「食用か否か」「甘いか否か」で区分することはない。同様に、日本の植物学の礎を築いた牧野富太郎もまた、膨大な標本と精緻なスケッチを通じて、植物の本質をその解剖学的構造に見出していた。
植物分類学において重要なのは、それが「果実(Fruit)」であるか「その他の器官(茎、葉、根など)」であるかだ。受精した雌しべの子房が膨らんでできたものは、甘さや食べ方に関係なくすべて「果実」である。したがって、トマトもイチゴも、ナスやカボチャも、植物学上は等しく「果実」にほかならない。一方で、キャベツは「葉」、ゴボウは「根」、アスパラガスは「茎」を食べているわけだ。