国内には数多の採掘跡が存在するが、なかでも伝説として語り継がれるのが山梨県の乙女鉱山と、大分県に位置する尾平鉱山である。乙女鉱山は高純度の水晶とともにタングステンやモリブデンを産出し、日本の近代化を陰で支えた名鉱として知られる。ここで発見された美しい六角柱状の群晶は、鉱物学の研究においても極めて重要な資料とされた。
一方、九州の地に鎮座する尾平鉱山は、独特の晶癖を持つ日本式双晶や、複雑なスカルン鉱物を伴うことで世界中の研究者を魅了した。日本地質学会などの学術研究でも度々取り上げられ、その地質構造の複雑さと産出鉱物の多様性は、まさに大地の奇跡と呼ぶにふさわしい。これらの鉱山はすでに閉山を迎えているが、そこから生み出された標本は今なお世界の博物館やコレクターの手で大切に保管されている。