童話の中で最も印象的な「ここ掘れワンワン」というフレーズ。単なる飼い犬の恩返しとして片付けられがちですが、民俗学においてシロという犬の童話的役割は、現世と常世(異界)を媒介する「地中神の化身」と解釈されます。
古来、農耕民族にとって地中は祖霊が眠り、同時に作物の実りをもたらす神聖な領域でした。犬は優れた嗅覚と聴覚によって目に見えない霊力を察知する「神の使い」と位置づけられており、シロが土を掘る行為は、地下に眠る富や霊力を地上へ引き出す神託の儀式を意味していました。
正直爺さんはシロの神聖な託宣を純粋に受け止めたため黄金を授かりましたが、隣の老人は私利私欲のために神使を虐待・使役しようとしたため、地下の穢れ(蛇や汚物)を引きずり出してしまったのです。シロの死後、霊魂が「木」へ宿り、さらに「臼」、最終的に「灰」へと姿を変えながら正直爺さんを守り続ける構造は、古代日本の霊魂不滅信仰(アニミズム)の典型的な変遷パターンを示しています。