シネマスコープの広い画角、夕暮れ時のマジックアワーを捉えた陰影豊かなカメラワーク、そして荒々しい排気音とアコースティックギターが重なり合う音響設計。この作品が放つ空気感は、往年の傑作ロードムービーを彷彿とさせる。
従来のトラベル・ドキュメンタリーにありがちだった過剰なナレーションや観光地のアピールは一切排除されている。沈黙のなかに流れる風の音、油が弾けるフライパンの音、そしてフランクの短い独白。引き算の美学によって研ぎ澄まされた映像体験が、観る者をまるでバイクの後部座席に乗っているかのような没入感へと誘う。