なぜ水分を与えすぎると根が傷んでしまうのか。その理由は、胡蝶蘭が属するラン科植物特有の生理構造にある。自生環境における胡蝶蘭は、土ではなく大樹の幹や枝に根を張り、スコールによる短時間の湿気と強烈な風を受けて生きている。
根の表面は「ベルアメン(根被)」と呼ばれるスポンジ状の細胞層で覆われており、瞬間的に水分を蓄える能力に長けている。しかし、鉢植えの中で常に水分が停滞すると、根が呼吸困難に陥り壊死を始める。乾燥期を意図的に作ることで根は水分を求めて伸び、酸素を取り込んで健全さを保つ。水と酸素の絶妙なバランスこそ、プロが実践する育成理論の真髄だ。