プロの料理人が作るおひたしは、なぜあんなにも鮮烈なエメラルドグリーンで、シャキッとした歯ごたえが残っているのか。その秘密は、辻調理師専門学校などでも徹底して教え込まれる伝統的な和食調理技法にある。
茹で上がったほうれん草は、間髪を入れずに氷水、あるいは冷水に落とす「色止め」を行う。急冷することで葉緑素(クロロフィル)の熱変色を食い止め、余熱による組織の軟化を防ぐ。さらに、冷水に浸す時間自体もシュウ酸の二次排出を促す重要なプロセスとなる。
NHK『きょうの料理』でも度々実演されるように、水気を絞る際は「巻き簾(まきす)」や両手を使って根元から葉先へ均等に力をかけ、優しく水気を切る。力を入れすぎて繊維を破壊すると、旨味を含んだ細胞液まで流れ出てしまう。丁寧な冷水締めと適切な水絞りこそが、一流の仕上がりを生み出す。