青山学院大学陸上競技部の強さを語る上で欠かせないのが、町田寮で寮母を務める美穂夫人の存在です。美穂夫人は、単なる炊事係にとどまらず、多感な時期にある長距離ランナーたちの「精神的支柱」としての役割を果たしてきました。
就任当初の町田寮は、朝の点呼に遅刻する部員や掃除を怠る部員が目立ち、競技力も低迷していました。原監督がビジネスマン仕込みの目標管理シートや規律を持ち込んで選手と正面から衝突した際、その間に入って選手たちの本音を聞き出し、両者のパイプ役を務めたのが美穂夫人でした。
「監督の前では緊張して言えない悩みも、美穂さんには話せる」——歴代の青学ランナーたちが口を揃える事実です。毎朝5時過ぎから部員たちの朝食を準備し、ケガで走れず苦しむ選手や、大会メンバーから外れて涙を流す選手に対して、過剰に干渉することなく、温かい食事とさりげない声かけで寄り添い続けました。
公の場で見せる原監督の堂々とした采配やユーモアあふれる発言は、美穂夫人が家庭と寮の基盤を完璧に守り抜いているという絶対的な安心感があってこそ成立しています。メディア取材において原監督はしばしば「青学の強さの半分以上は妻の内助の功のおかげ」と語っており、お互いを尊敬し合う深いパートナーシップが根底に存在しています。