『僕のヒーローアカデミア』という作品が現代社会に遺した最大の功績は、「絶対的な単一のヒーローに依存する社会の危うさ」を暴き、その克服を描いた点にあります。
オールマイトという巨大な「平和の象徴」が存在した時代、社会は一見平穏でしたが、市民は「誰かが助けてくれる」という思考停止に陥り、街の片隅で助けを求める子ども(転弧=死柄木)を見殺しにしました。その歪みがヴィラン連合という形で社会に復讐をもたらしたのです。
デクたちの戦いは、その構造自体を変革する旅でした。お茶子の「ヒーローが辛い時、誰がヒーローを守るのか」という問いかけ、そして緑谷出久が独りで倒れそうになった時にクラス全員が手を差し伸べた展開は、「全員が誰かのヒーローとして手を伸ばす社会」への脱皮を明確に示しています。これは、昭和・平成の「個の強さで世界を救うヒーロー像」から、令和の「連帯と共助によって支え合うヒーロー像」への決定的なパラダイムシフトであり、本作が不朽の名作と呼ばれる所以です。