作品がギャグ描写に振り切っている一方で、背後にあるヘタリア独伊の史実は決して甘いものばかりではありません。近代史における大日本帝国、ナチス・ドイツ、イタリア王国による「日独伊三国同盟」の締結と、その後の第二次世界大戦における敗戦と混迷は、世界史の痛切な現実です。
当時の特番インタビューや公式資料において作者・日丸屋秀和氏が度々触れてきたように、ヘタリアの根底には「歴史の光と影に対する真摯なリサーチ」が存在します。実際の歴史上でも、軍事力や工業力で圧倒的に劣勢だったイタリア軍を、ドイツ軍(エルヴィン・ロンメル率いるドイツアフリカ軍団など)が救援に向かい、泥沼の補給難に苦しめられた史実が数多く残されています。
作中ではその歴史的苦境が「戦場でパスタを茹でて水を浪費するイタリア」や「胃薬を手放せないドイツ」というマイルドなギャグに変換されています。しかし読者は、二人がやがて直面する過酷な歴史の帰結(イタリアの早期降伏や連合国への転換、ドイツの分断)を知っているからこそ、作中で交わされる何気ない日常の穏やかな時間に、痛切なまでの尊さを見出すのです。