ドライバーにとっては「不便極まりない規制」と感じられる車両横断禁止ですが、公安委員会が無作為に設置しているわけではありません。そこには明確かつ合理的な横断禁止標識の設置理由が存在します。
第一の理由は、「右折待ち車両による追突事故と渋滞の抑止」です。中央分離帯のない片側2車線以上の幹線道路では、走行車線と追越車線が高速で流れています。そうした道路で前走車が突然ブレーキを踏み、対向車が途切れるのを待って右折停止すると、後続車は急減速を強いられます。特に夜間や雨天時、追越車線上で停止した車両への追突事故率は跳ね上がります。道路交通工学の観点からも、道路の中央で車流を滞留させるリスクを排除することが最優先されるのです。
第二の理由は、重大事故の温床となる「サンキュー事故(直近右折事故)」の防止です。反対車線の渋滞車両が親切心から車間を空け、「右折していいよ」と手で合図を送った結果、その左側の死角(すり抜けバイクや第1車線を走る直進車)が見えずに激突する惨事は全国で日常茶飯事に起きています。警察庁の事故分析データによると、道路外施設へ進入しようとする右折車と直進バイクの衝突事故は、死亡または重傷に至る割合が極めて高い危険挙動と指定されています。
利便性よりも人命保護と都市機能の維持。これが車両横断禁止標識が幹線道路や市街地の特定ルートに集中的に配置されている真の背景です。