制作現場は、まさに極限状態の連続だった。長野と山梨の県境に位置する黒曜石地帯の山中、氷点下10度を下回る過酷な環境で敢行された長期ロケ。そこには予定調和を徹底的に排除した、生々しいリアリティへの異常な執念があった。
「当初の脚本にあった自治体や大手インフラ企業の固有名詞に対して、外部から猛烈な圧力がかかったのは事実です」。制作デスクを務めたスタッフの一人は、声を潜めてこう明かした。一時は主要出資企業が相次いで撤退を表明し、企画そのものが凍結寸前まで追い込まれたという。だが、クリエイティブ陣は一歩も引かなかった。脚本の改稿を重ねつつも、問題の本質である“不可解な隠蔽工作”の描写をさらに研ぎ澄ませ、劇映画でありながら事実の重みを損なわない独自の表現へと昇華させたのだ。
現場ではCGに頼らない実写の質感にこだわり、極寒の沢に俳優陣が腰まで浸かる過酷な撮影が連日続いた。フィルムに焼き付けられた濁った水流の冷たさと人間の業は、観る者の皮膚感覚を直接揺さぶる。