切った瞬間に溢れ出すジューシーな肉汁は、適切な配合と科学的な下処理によって意図的に作り出すことができます。基本となる合い挽き肉ハンバーグの黄金比は、牛肉7に対して豚肉3の割合です。牛肉の豊かな風味と赤身の弾力に、豚肉のまろやかな脂身と保水性が加わることで、最もバランスの取れた肉質が完成します。
仕上がりを左右する最大のポイントが合い挽き肉の臭み消しと下処理です。挽き肉の脂は人間の手の体温(約36℃)でも溶け出し、これが肉汁流出とパサつきの直接原因になります。ボウルを二重にして底に氷水を当てるか、しっかりと冷やしたひき肉を使い、まずは肉の重量に対して1%の塩だけを加えて素早く練り込みます。塩の浸透圧によってタンパク質(ミオシン)が網目構造を作り、水分と脂を抱え込む強力な保水ゲルが形成されるためです。
白っぽく粘りが出た段階で、ナツメグ、粗挽き黒胡椒、飴色に炒めて冷ました玉ねぎ、牛乳に浸したパン粉、卵を加えます。臭みの元となる揮発成分はナツメグと少量の日本酒(または赤ワイン)でマスキングされ、パン粉が加熱時に溶け出す肉汁を余すことなく吸収します。両面を中火で焼き固めてから少量の水を加えてフタをし、弱火で蒸し焼きにすれば、ふっくらと膨らんだ極上ハンバーグの完成です。