法務省の「登記統計」および国税庁の法人統計データを紐解くと、現在日本国内で設立される新設法人のうち、約65%が株式会社、約35%が合同会社を占めています。一方、合資会社の年間設立数は全国でもごくわずか(全体の0.02%未満)にまで落ち込んでいます。なぜここまで合資会社は選ばれなくなったのでしょうか。
その決定打となったのが、2006年5月に施行された「新会社法」の抜本的改正です。
2006年以前の旧商法時代、株式会社を設立するには「資本金1,000万円以上・取締役3名以上・監査役1名以上」という極めて高いハードルが課されていました。そのため、「資本金が足りない」「少人数ですぐに法人格が欲しい」という個人起業家は、資本金制限がなく設立手続きが簡便な「有限会社」や「合資会社」を選択する経済的合理性がありました。
法改正によって以下の3つの大改革が同時に実行されました。
- 合同会社(日本版LLC)の新設:1名のみ・資本金1円・定款認証不要・設立費用6万円で設立でき、かつ出資者全員が有限責任という理想的な法人形態が誕生。
- 株式会社の規制緩和:資本金1円・発起人1名・取締役1名のみで株式会社の設立が可能になり、ハードルが劇的に低下。
- 有限会社制度の廃止:新規の有限会社設立が停止され、安価な設立需要の受け皿が合同会社へ完全にシフト。
この法改正により、「設立費用を安く抑えたいなら合同会社」「信用度や上場・外部資金調達を狙うなら株式会社」という明確な棲み分けが完成しました。「わざわざ個人財産を危険に晒し、2名以上の人員を揃えてまで合資会社を設立する実務上のメリット」が完全に消失したのです。