魔法界の歴史において数々の血みどろの争いを生んできたのが、死の秘宝の1つである「ニワトコの杖(Elder Wand)」です。作中で「最強の杖」と称されながらも、その所有権(忠誠心)の移動プロセスは極めて厳格かつ複雑なロジックによって支配されていました。
ニワトコの杖は、前の持ち主を「力で凌駕・武装解除した者」にのみ忠誠を誓います。必ずしも相手を殺害する必要はありません。歴代の著名な所有ルートを整理すると、以下の劇的な変遷を辿っています。
- アンティオク・ペベレル:死神からニワトコの杖を授かったとされる三兄弟の長男。自慢の末に喉を掻き切られ強奪される。
- グレゴロビッチ:高名な杖作り職人。研究中に若きゲラート・グリンデルバルドに盗まれる。
- ゲラート・グリンデルバルド:1945年の伝説的決闘でアルバス・ダンブルドアに敗北。
- アルバス・ダンブルドア:半世紀にわたり所持。死の直前、天文塔でドラコ・マルフォイに「武装解除呪文(エクスペリアームス)」を受け、無意識のうちに忠誠心がマルフォイへ移動。
- ドラコ・マルフォイ:自身がニワトコの杖の真の主であることを自覚しないまま生活。
- ハリー・ポッター:マルフォイ邸での小競り合いの際、ドラコの手から「サンザシの杖」をもぎ取って力で圧倒。この瞬間、物理的にはダンブルドアの墓所にあったニワトコの杖の忠誠心がハリーへと転移。
ヴォルデモートは「ダンブルドアを殺害したセブルス・スネイプが主である」と誤認しスネイプを処刑しましたが、杖の忠誠心は最初からスネイプには宿っていませんでした。この勘違いこそが、最終決戦におけるヴォルデモートの自滅を決定づけたのです。
また、ハリーのヒイラギの杖とヴォルデモートのイチイの杖は、共にダンブルドアのペットである不死鳥「フォークス」の尾羽を芯材とする「兄弟杖」の関係にありました。このため、2人が直接呪文を撃ち合った際に杖同士が戦闘を拒絶し、過去に放たれた呪文が逆再生される現象「プリオリ・インカンターテム(直前呪文)」が発生したのです。