韓国の平均寿命がこれほど急激に伸長した背景には、単一の要因ではなく、国家的な制度改革と社会基盤の向上が複合的に絡み合っています。最大の要因として専門家が一致して挙げるのが、1989年に全国民を対象として導入された「国民健康保険制度」の存在です。
この公的医療保険制度の確立により、かつては経済的理由で受診を諦めていた低所得層や農村部の人々が、安価かつ迅速に高度な医療機関へアクセスできるようになりました。韓国では外来受診のハードルが極めて低く、国民1人あたりの年間外来受診回数はOECD平均(約6.7回)の2倍以上に相当する年間15回以上と世界トップを誇ります。この手厚い早期発見・早期治療のサイクルが、脳血管疾患や虚血性心疾患などの死亡率を劇的に押し下げました。
加えて、国家主導の検診システムも長寿化に大きく寄与しています。韓国政府は「国家がん検診プログラム」を推進し、胃がんや大腸がん、乳がんなどの主要がん検診を無料または極めて低額の自己負担で受診できる体制を整えました。さらに、経済成長に伴う栄養状態の改善、上下水道などの公衆衛生の近代化、そして1970年代から劇的に減少した乳幼児死亡率の改善が、平均寿命の数値を大きく押し上げる原動力となりました。