石畳の坂道がまっすぐに青い海へと落ちていく構図。この圧倒的な奥行きと開放感は、半世紀近くにわたり数々の名作映像を生み出してきた。古くは1980年代、ライオン株式会社の「チャーミーグリーンCM」で老夫婦が仲睦まじく手をつないでスキップする愛らしい姿が全国で話題を呼び、「手をつなぎたくなる坂」として一世を風靡した。
その映像美の遺伝子は現代の映画界にも色濃く受け継がれている。菅田将暉と小松菜奈がダブル主演を務めた映画『糸』では、登場人物たちの運命が交錯する重要なシーンの背景として八幡坂が選ばれた。北国の情緒と登場人物の情感を際立たせる舞台装置として、これ以上の場所はなかったといえる。
こうした撮影を陰で支え続けているのが函館フィルムコミッションの存在だ。ロケ地誘致から撮影現場の交通整理、地域住民との綿密な調整に至るまで、官民一体となった迅速なサポート体制が敷かれている。映像制作者が「函館で撮りたい」と熱望する背景には、自然の造形美だけでなく、制作を歓迎する街の熱意がある。