画面越しの世界はいつだって美しく、自由さに満ちあふれている。Netflixで世界的な大ヒットを記録したドラマ『エミリー、パリへ行く』のような華やかなライフスタイルや、Vlog形式のライフスタイル・ドキュメンタリー動画は、視聴者に「ここではないどこか」への強い情景を抱かせる。洗練されたカフェでの朝食、多国籍な友人とのパーティー、異国情緒あふれる街並みの散策——これらは確かに海外生活の一面ではある。
しかし、画面の裏側には泥臭い日常が横たわっている。行政手続きの圧倒的な遅さ、日常的な言語の壁、盗難や詐欺に対する常時警戒、そして病気になった際の心細さ。エンタメ作品が切り取る「光」の部分だけを信じて飛び出すと、現場で直面する「影」のギャップに打ちのめされることになりかねない。メディアが提供するイメージを消費する側から、冷徹な現実を冷徹に受け止める当事者へと意識をシフトさせることが移住成功の絶対条件だ。