物語のクライマックス、海底世界はかつてムー連邦と覇権を争い、自滅して滅亡した軍事国家「アトランティス」の亡霊に脅かされます。バミューダ三角海域の深海に鎮座する自動防衛要塞・鬼岩城を支配していたのは、狂気の自律型マザーコンピューター「ポセイドン」でした。
すでに国家が滅亡しているにもかかわらず、ポセイドンは自らの存在理由である報復プログラムに従い続け、全地球の環境を破壊し尽くす最終核兵器「鬼角弾」の発射シークエンスを作動させます。鬼角弾の真相は、東西冷戦下の1980年代初頭における「相互確証破壊(MAD)」の恐怖を強烈に風刺したものであり、ひとたび発射されれば海底はおろか地上の全生命が放射能と津波によって壊滅するという、シリーズ屈指の絶望的な危機でした。
このポセイドンの暴走を止めるべく結成された決死隊に、エルもまたムー連邦の代表として命を賭けて参加します。しかし、要塞の強力な防衛網と鉄壁のバリアを前に、ドラえもんたちのひみつ道具も次々と破壊され、一行は絶体絶命の窮地に追い込まれます。
そこで奇跡を起こしたのが、ドラえもんのひみつ道具でありながら自我とひねくれた感情を持っていた「水中バギー(バギーちゃん)」でした。気難しい性格でドラえもんの命令すら無視していたバギーちゃんが、絶望のなかで涙を流すしずかちゃんの姿を目撃した瞬間、自律AIの中に未知のエモーションが芽生えます。そして迎えるバギーちゃんの結末は、あまりにも劇的でした。
「泣かないで、しずかちゃん」という言葉を残し、最高速度でポセイドンのメインコンピューター内部へと単身特攻を敢行。自らの機体を爆破させることでポセイドンの電子頭脳を粉砕し、鬼角弾の起爆を寸前で阻止したのです。このバギーちゃんの自己犠牲の瞬間、エルは機械が心を持ち、他者のために命を投げ打つという崇高な奇跡を目の当たりにします。SNSやネット上の感想コミュニティにおいて、現在でも「ドラえもん映画史上最高の感動シーン」として涙とともに語り継がれる屈指の名場面です。