映画『海底鬼岩城』に登場するエルに関して、検索エンジンの関連ワードでも常に上位に挙がるのが「性別の真相」です。結論から述べると、エルの性別は「男の子」であり、海底に高度な文明を築いた「ムー連邦」の国境警備を担う若き少年兵です。
それにもかかわらず、視聴者の間で「女の子ではないか」という疑問が長年囁かれ続けてきた背景には、綿密に計算されたキャラクター造形と声優の演技プランが存在します。
原作漫画(藤子・F・不二雄作)におけるエルは黒髪の精悍な少年として描かれていましたが、1983年の劇場版アニメ化に際して「金髪碧眼の儚げで中性的な美少年」へとビジュアルがアレンジされました。さらに、1983年版でエル役を務めたのは、『フランダースの犬』のネロ役などで知られるレジェンド声優の喜多道枝(きた みちえ)さんです。芯の強さと少年のあどけなさ、どこか透明感のある少女のような響きを兼ね備えた喜多さんのハイトーンボイスが、エルの神秘性を際立たせ、視聴者に中性的な印象を強く植え付けました。
また、物語序盤においてエルはムー連邦の掟に従い、地上人であるドラえもんたちを厳しく警戒・拘束する立場として登場します。しかし、のび太たちの無邪気な優しさに触れるなかで次第に頑なな警戒心を解き、自らの命を顧みず世界を救うために共闘する関係へと変化していきます。この繊細な心理描写と可憐なビジュアルのギャップこそが、半世紀近くにわたりファンを惹きつけてやまない理由といえます。