高校化学や基礎無機化学の講義でも頻出するH2O2の電子式と過酸化水素の構造式を紐解くと、この分子がいかに特異な立体形状をしているかが明確になります。平面上に単純に「H-O-O-H」と並んでいるわけではありません。
電子式で見ると、2つの酸素原子の周りにはそれぞれ2組の非共有電子対(孤立電子対)が存在しています。この計4組の電子対同士が強い静電反発を起こすため、分子全体は平らにはなれず、まるで「半開きにした本」の背表紙に酸素原子が乗り、それぞれのページの両端に水素原子が位置するような立体的な折れ曲がり構造(二面角 約111.5度)をとります。
構造式としては「H-O-O-H」と表記されますが、この折れ曲がりによって分子内の極性が偏り、外部からのわずかな刺激(光、熱、金属イオン)によって「O-O」結合が容易に切断されます。切断された瞬間、極めて反応性の高いヒドロキシラジカル(・OH)や活性酸素種が発生し、周囲の有機物を猛烈な勢いで酸化します。この電子的な緊張状態こそが、強力な殺菌力と危険性を生み出す源泉です。