駅前の雑踏から門をくぐった瞬間、空気が一段ひんやりと澄み渡る感覚に包まれます。人々を惹きつけてやまない最大の理由は、段丘の上下でまったく異なる表情を見せるドラマチックな空間構成にあります。
園内上段には明るく広々とした芝生広場と開放的なテラスが広がり、旧岩崎家別邸の瀟洒な本館(現在は管理事務所・展示室)が歴史の重みを伝えます。そこから木漏れ日が差し込む竹林の散策コースや木々が鬱蒼と茂る小道を下っていくと、下段には幽邃(ゆうすい)な森と水の世界が姿を現します。
その中心にあるのが、崖線の岩間から絶え間なく清流が湧き出る「次郎弁天の池」です。武蔵野の地下水が地層の境目から湧出するスポットで、澄みきった水面には鯉が優雅に泳ぎ、周囲には瑞々しいシダや苔が群生しています。都会の駅前でありながら、深山幽谷の渓谷を訪れたかのようなトリップ感を味わえる点が、目の肥えた庭園ファンをも唸らせる理由です。