かつて「天彦フリックス」と呼ばれた意表を突く構想力。今、その深層を支えているのが過酷なまでのAI将棋研究だ。将棋ソフトが提示する膨大な選択肢の中から、人間的な感覚と調和する「美しき解」を抽出する能力において、彼の右に出る者はいない。AIの評価値に振り回されるのではなく、人工知能の示す数値を自らの血肉へと昇華させている。
盤上の局面が混迷を極めた時こそ、真価が試される。AIが最善手と示さないような一見すると不自然な手が、数千歩先の終盤で鮮やかな勝利のピースへと変化する。型に嵌まらない発想力こそ、彼がAI時代に放つ鋭いアンチテーゼなのだ。