木工コミュニティや大手Q&Aサイトの投稿を検証すると、鬼目ナットに関する失敗談には明確な共通パターンが存在します。とりわけ多いのが、以下のような生々しい現場の証言です。
「数万円したウォールナットの無垢天板に脚を付けようとM8の鬼目ナットをねじ込んだら、木口付近から派手にピシッと割れ目が走った。下穴径をパイン材と同じ感覚で開けていたのが原因だった」(30代男性・家具製作愛好家)
「ネジが途中で固くなって動かなくなり、無理やり六角レンチに体重をかけたら六角穴が丸く潰れて完全に詰んだ」(40代女性・DIY歴2年)
こうしたトラブルの背後には、木材特有の繊維方向(異方性)が関係しています。木材は長手方向(木目と平行)の引張力には極めて強い反面、木目を押し広げる方向の力には脆い性質があります。天板の端から20mm〜30mm以内の近距離に鬼目ナットを打つ場合、どれほど下穴を適正に開けていても割れが発生しやすくなります。端部に施工せざるを得ない場合は、外径の小さいサイズ(M5やM4)を選択するか、ハタガネやクランプで木材の側面を強く挟み込んで木割れを外側から抑え込みながらねじ込むといった予防措置が不可欠です。
万が一、六角穴をなめてしまったり、途中で噛み込んで動かなくなったりした場合の「抜き方・外し方」も知っておく必要があります。軽度であれば、鬼目ナットの内ネジに適合する長い全ネジボルトを奥までねじ込み、ダブルナットで固定した上で、下側のナットをスパナで反時計回りに回すことでボルトごとナットを共回りさせて救出できます。それでも回らない重度の破損時は、ネジ外し用の逆タップ(エキストラクター)を使用するか、最終手段として木工用丸棒(ダボ)と同じ太さのドリルでナットごと座繰り落とし、広葉樹の丸棒をタイトボンドで叩き込んで完全に埋木(埋め直し)してから、改めて下穴を開け直すリカバリー技術が現場では用いられています。