胡蝶カナエという人物の真価を語る上で欠かせないのが、栗花落カナヲとの邂逅です。親から虐待を受け、人買いに売られて縄で縛られていた幼いカナヲを偶然見かけたカナエとしのぶ。しのぶが「この子は駄目、自分で何も決められない」と戸惑う中、カナエは一切の躊躇なく人買いにお金をばら撒き、強引に連れ帰るという豪快かつ温かな行動に出ました。
心を完全に閉ざし、指示されなければ食事すら口にできなかったカナヲに対し、カナエが手渡したのが「銅貨」でした。迷ったときは硬貨を投げて決めるよう教え、困惑するしのぶに対してカナエは微笑みながらこう諭します。
「きっかけさえあれば、人の心は花開くから大丈夫。いつか好きな男の子でもできたら、カナヲだって変わるわよ」
この言葉は単なる楽観論ではなく、人間の持つ可能性と善性を無条件に信じるカナエの人生観そのものでした。後に炭治郎との出会いを経てカナヲが自らの意思で感情を取り戻した際、この銅貨とカナエの教えが決定的な契機となったことは言うまでもありません。カナエは剣士としてだけでなく、傷ついた孤児の心を救い出す希代の養育者でもあったのです。