下弦の伍・累の原点には、涙なしには語れない哀しい過去が存在する。人間時代の彼は生まれつき体が弱く、走ることすら叶わない少年だった。そこに漬け込んだのが、鬼の絶対的支配者である鬼舞辻無惨である。無惨の血を与えられたことで強靭な体を手に入れた累だったが、引き換えに人を喰らう怪物へと変貌してしまった。
人をあやめる息子を見かねた両親は、共に地獄へ行く覚悟で累を刺し殺そうとする。しかし、怒りに狂った累は返り討ちにしてしまう。消滅の瞬間、両親が残した「一緒に死んであげられなくてごめんなさい」という言葉の意味に気づいた累は、自分が切断してしまったのは親子の絆そのものだったと悟るのだった。
彼が操る鋭利な蜘蛛の糸――「血鬼術」の裏設定にも、その心理が色濃く反映されている。糸は「繋がりの象徴」であると同時に、強固に見えて容易に断ち切られてしまう脆弱さを孕んでいる。刃を寄せ付けない硬度の糸で他者を縛り付けようとすればするほど、彼自身の孤立は深まっていったのだ。