人間はなぜ、これほどまでに魚の頭部に自己の面影を重ねたがるのだろうか。
ロボット工学で提唱された「不気味の谷」現象は、人間に中途半端に似た造形物に対して私たちが強烈な嫌悪感を抱く心理を説明する。しかし、水中に蠢く異形に対して私たちが抱く感情は、単なる嫌悪にとどまらない。そこには底知れぬ畏怖と、どこか自罰的な好奇心が混ざり合っている。
犬や猫のような哺乳類が見せる表情には共感できる。だが、無機質に開閉するエラと、決して瞬きをしない球体の瞳を持つ冷血動物が、人間の表情を模倣しているように見えた瞬間、私たちは自分たちが生物ピラミッドの頂点に君臨しているという傲慢さを揺さぶられる。泥水の中から見つめ返してくるその顔は、文明の光が届かない水底へ引きずり込もうとする、無意識の鏡像のようだ。